青春時代

純子の気を引きたい。
どうすればいいんだ?

まだ、ピュアなあの頃の俺は
そんな事を悩んでいた。

当時俺は母親の買い物を手伝う事が
多かった。年が離れた妹がまだ幼く
家に置いて留守に出来ない為だ。

今の時代のように、あたり前の
ように家に車など無く、逆に
自家用車がある家など限られていた。

妹を連れて買い物に出かけるのが
大変であった母親の代わりに、俺は
学校が終わってから買い物に行った。

俺が自分が親孝行であったと思える
のはこの時ぐらい迄であろう。

後に反抗期が始まってからは親孝行
どころか、早く家を出て行きたくて
親の顔など見たくも無かった。

家の中で暴れて物を破壊した事も
何度もあった。なので親孝行だった
自分はこの頃が最後だ。

その日スーパーに行くと、手芸用品
の売り場の前で何やらミシンが
置かれていた。

ミシンなんてもう今では家庭にある
のが珍しい物だが、昭和の時代には
各家庭に1台はあったと思う。

今の電子レンジのように。

その時見たのは小型ミシンの実演販売
のようだった。脇にはミシンが入って
いるであろういくつかの箱が積まれて
いたからだ。

俺の目がふとそのミシンに止まった。

何故なら、ハンカチに名前を入れる
実演をしていたからだ。

その時、突然閃いた。

そうだ、純子に名前入りのハンカチを
プレゼントしよう。

実演している女性におずおずと聞いた。

ここでハンカチを買ったら名前の
刺繍を入れて貰えないかと。

やさしげな女性は中学生の俺が
そんな事を聞いてきたので
微笑ましく思ったのだろう

「いいですよ。」

そう言ってくれたのだ。

恋愛カップルにクリックを!

  にほんブログ村 大人の生活ブログ タイナイトライフ情報(ノンアダルト)へ