青春時代
買い物に来ていたので、金はあった。
勿論、親の金だが・・・。
ただ、こうして何度か家の手伝いを
しているのだから、その手間賃ぐらい
いいかと、勝手に自分を納得させ
ハンカチを買う事にした。
確か500円ぐらいであった。
そう思うと今の時代でも500円も
出せばハンカチなんて十分に買える。
如何に物の値段が上がっていないか
思い知らされる。
いや、今ならダイソーに行けば100円
で買えるだろう。逆に値段が下がって
いる。時代は豊かになった筈なのに
何故なんだろう?
「高度成長期」というひと昔前の
日本経済が、今や「低度尻すぼみ期」
になってしまったのか。
俺は縁取(ふちど)りがピンクの
小さな蝶の模様が入ったハンカチを
選んだ。
そしてミシンの前にいる女性に
これを買うので名前を入れて下さい。
そう頼んだのだ。
女性はとても親切な人であった。
刺繍を無料にしてくれたのだ。
俺はこの時、少しかっこをつけ
「ローマ字で入れて下さい。」
そう言ったのだ。
俺が中学に入った頃、日本もようやく
英語教育が始まった。
まずはローマ字というものを習い
始めたのだ。
それまで、日本はそろばんや習字が
学校での生活?必修科目であった。
フィリピンのように英語を第2公用語
にするぐらいの教育を始めていたら
俺の人生もまた変わっていたかも
知れない。
いや、俺だけでなく英会話を話せる
ようになっていれば、大勢の人達の
人生が変わっていたかも知れないと
思える。
早い段階からグローバル日本として
沢山の人々が海外に出て行ったかも
知れないからだ。
国が与える子供達への教育の影響が
如何に大きいか感じる。
なんせ俺の中学時代の英語の教師は
英語が話せなかったのだ。そんな
教師が生徒に英語を教えていたのだ。
泳げない人間が本で勉強し、水泳を
教えているようなものだ。溺れて
しまうだろ。
マジ笑える。
「じゃ、このメモに書いて。」
女性に言われ、俺はそこに彼女の
名前を書いた。女性はローマ字など
習った事の無い世代であった。
俺はメモにこのように書いた。
「ZUNKO」
まだようやくローマ字を習い
始めたばかりなのに、俺はかっこ
をつけ大きなミスをしたのだ。
それは、もうお分かりだと思う。
恋愛カップルにクリックを!
