青春時代
家に帰る迄の時間、こんなにも
長くもどかしく感じた事は無かった。
俺は家に帰ると直ぐに部屋に
こもった。勿論、徳子からの手紙を
見る為だ。
カバンを置き、勉強机の前に座った。
制服のポケットから彼女の手紙を
取り出し、大切にゆっくりと開けて
みた。
初めて女から貰った手紙だ。男なら
誰しもが興奮して踊り出したい気分
になるだろう。
手紙を開けると可愛い丸文字が俺の
目に飛び込んできた。
女の字はこんなにも可愛いのか!
女という生き物は全てに於いて男に
癒しを与えてくれる。
手紙のその文字でさえ、俺は優しい
気持ちになれた。
そして俺はその手紙を見た。
そこにはこんな言葉が並べられていた。
「M君へ。
突然こんな手紙渡してごめんなさい。
でもM君に私の気持ちを伝えたくて
書きました。
私は何時もM君を見ています。
いつかお話出来ればいいな・・・。
好きですM君。 徳子より。」
俺はその手紙を何度も何度も読み
返した。
静かな部屋で俺の胸の鼓動だけが
聞こえる。
徳子の書いた文字から伝わる彼女の
切ない気持ち。
俺をどうにしかしたいというより
「いつかお話出来たらいいな。」
そんな小さな望みが胸を打つ。
夕焼けの朱い陽がゆっくりと部屋に
差し込んでくる中で
俺は手紙を持ったまま長い間
動けないでいた。
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