青春時代

手紙を読み終えてもまだ俺は
手紙を持ったままでいた。

俺が好き?

誰が?

徳子が?

友達の久美子が言った事は本当
だった。
徳子は俺が好きだったようだ。

ふと見ると手紙は2枚あった。
もう1枚はなんだろう?

そう思い2枚目を見ると、そこには
女の子の顔が描かれていた。

「愛と誠」の愛の顔だった。

「愛と誠」それは当時大人気であった
純愛青春ドラマの漫画だ。

原作はなんとあの梶原一騎さんである。

あしたのジョー・巨人の星それに
タイガーマスクなど、俺の胸を
躍らせたスーパーヒーロー達の
生みの親だ。

彼はその風貌から想像も出来ない
ような純愛ドラマまで生み出していた。

俺もこの漫画は大好きで何時も胸を
躍らせ読んでいたものだ。

徳子の描いた「愛」は本に出てくる
「愛」だとひと目で分った。

この後知る事になるのだが、徳子は
漫画を描くのが得意であった。

その絵は本当の漫画に出てくる
主人公とそっくりに描けていたのだ。

あまりのうまさにしばらく見入って
しまったぐらいだ。

しかし、女は凄い。

男の俺が何も出来ずに悶々としている
のに、徳子は自分の気持ちをこうして
ストレートにぶつけてきた。

俺は嬉しさの反面、自分の勇気の
無さに劣等感のようなものを感じた。

机の上に静かに手紙を置き、俺は
目の前の壁を見ていた。

徳子の顔を思い出す為だ。

全く意識していなかったので
どんな顔かもハッキリと思い出
せない。

何時からなんだろう?

俺の事を見ていたなんて全く
気付いていなかった。


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