青春時代
偶然にも徳子と彼女の棟で出会えた。
ただ、彼女は何時もの制服では無く
浴衣姿だった。
「なんて可愛いんだ。」
中学3年にしてそれは大人の色気
に感じた。まだ青臭い俺よりも
遥か先に徳子は大人に近づいていた。
俺など手出し出来無いかのような
領域にだ。
女も中学3年にもなると、もう
色気が出てくる。その昔なら
結婚が許された年齢だ。
「あ!M君!」
俺に気づいた徳子がこちらを見て
手を振ってくれた。
俺はこの時、何とも言えない気持ちに
なった。俺を好きな女が俺に嬉しそう
に手を振っている。
それも俺よりも遥かに大人に近づいた
彼女がだ。
「M君、来てくれたんだ。」
そう言って嬉しそうに彼女は俺に
近づいて来た。
彼女が俺に近づくにつれ、石鹸の香り
が俺の鼻をくすぐった。
多分、彼女は風呂上りの後で浴衣を
着たのだろう。
ふと彼女の入浴姿をフラッシュの
ように想像してしまった。
ほんのり赤い彼女の顔は、大人の
ように化粧などしなくとも、俺には
体を痺れさせるほどの色気を放って
いた。
俺に近づいて来た彼女は上気した
顔で俺を見ていた。
じっとだ。
その後俺は女のこんな目を何度も
見るようになる。
女特有の目を。
その目には本当に無限の意味が
込められていると思う。
「私はあなたが好き。」
そんな思いもあるだろうし
「この人は私をどう思っているん
だろう?」
そんな思いもあるだろう。
「私を大事にしてくれる?」
そんな意味合いも然り。
その瞳の中はもう無限大だ。
目は口ほどに物を言う。
女がじっと見つめてくる時こそが
まさにその時だ。
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