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青春時代

それは何時ものように陽子と駅で
待ち合わせ、学校までの道のりを
歩いていた時の事だ。

2人で歩いていると

「朝からイチャイチャすんなよ!」

そんな威嚇するような声が後ろから
聞こえてきた。

振り向くと、ごけはん(当時不良と
呼ばれた生徒が履いていたズボン)
を履いた悪そうな上級生だった。

俺の学校は校章のバッジの色で
年数が分かるようになっていた。

俺が振り返ると

「朝からイチャイチャすんなよ!」

再度、三角の目で俺に凄んできた。
身体の大きな悪(わる)だった。

カップル登校なんて珍しい時代だ。
それが鼻についたのだろう。

俺は陽子に黙ってカバンを渡した。
陽子が驚いて俺のカバンを受け取る。

俺はその上級生に近づいた。

俺は小柄なので、上級生は俺を
見下ろす感じで

「なんや?お前?」
「文句、あんのか?」

そう凄んできた。
いや、なめていた。

俺を見た目で・・・。

俺はその上級生に近づき何も言わず
いきなり顎(あご)を殴った。

驚いただろう。

まさか自分より弱そうな後輩が
いきなり殴ってきたのだから。

俺は当時喧嘩は先手必勝だと
思っていた。言い合いは無しだ。

言い合いになると相手もある程度
身構えるからだ。

油断している時にいきなり殴る。
これが一番効果があった。

俺は小柄な体格なのでこんな時は
相手の顎を狙った。

これが意外にもクリーンヒットした。

人間、顎を殴られると小さな力でも
身体に衝撃を受ける。

言い合いをして掴み合いなど時間の
無駄だと思っていたし、体の大きな
相手には不利だ。

喧嘩をするなら何も言わず先に殴る。
それしか考えていなかった。

よく、喧嘩で先に手を出した出さない
云々があるが、相手を威嚇した時点で
もうゴングは鳴っているのだ。

上級生は顎を殴られ尻餅を付き
顔を押さえ、うずくまった。

ただ、俺はそれ以上は何もしな
かったし、する必要も無かった。

そして陽子の元に戻り

「行こう。」

怯えている陽子にそう言って学校に
向かった。

昼休み職員室に呼ばれた。

何処でどう聞いたのか俺が上級生を
殴った事が担任にバレていた。

殴られた相手が保健室にでも行った
のかも知れない。

一応理由を説明し、不問にされた
のだが教室に戻ると、他のクラスの
悪い奴らが5~6人俺を待っていた。

「お前がMか?」

仕返しをしに来たのか、それとも俺に
ヤキを入れに来たのか分からなかったが

「お前、〇〇さん殴ったのか?」

そう凄んできた。

ごけはんに両手を入れて膨らませて
俺に近づき威嚇する。

まるで襟巻トカゲの威嚇だ。

両手をポケットに入れたりしたら
反撃できないのにこいつバカだな。
そう思って俺は身構えた。

多分向こうは人数がいたので
またもや俺を舐めていたのだろう。

それに俺は小柄だからだ。

人を見た目でなめてはいけない。
これは鉄則だと思う、油断に
繋がるからだ。

どうやら俺の殴った上級生は
そいつらの先輩格のようだった。

先輩がやられたので、俺にカツ
でも入れにきたのだろう。

「おう、調子に乗んなよ。」

襟巻トカゲが威嚇するように言った。

そいつの態度が横柄だったので
俺はいきなりそいつも殴りつけた。

そいつが
椅子をこかして後ろに倒れた。
その為、教室内に大きな音がした。

周りにいた奴らが驚いてこちらを
見ている。いきなり俺が殴った
からだ。

まさか!そんな顔をしていた。

そして誰もが黙って何も言わなく
なった。俺は席に戻った。

先手必勝。おれの戦法が功を奏した。

この時殴った相手が先生に告げ口
していたら俺は間違い無く停学
だったろう。

職員室で注意されたばかりであった
からだ。

しかし、そいつは何も言わなかった
ようだ。その男気は良しとしよう。

その後校内で因縁をつけられる事
無く、無事卒業出来た。

Mという奴は何も言わずいきなり
殴ってくる。

あいつは頭がおかしい。
そう思われたのかも知れない。

ただ、また仕返しされ再び大喧嘩に
なって
いたら、俺は退学させられて
いただろう


そうすれば俺の人生はまた大きく
変わっていたと思う。

そう思うと人生なんて、
ちょっと
した事でその後に大きな影響を
及ぼすものなんだと思う。

まるで「運否天賦」の言葉のように。

※「運否天賦」(うんぷてんぷ)
幸運と不運は天に決められている
ということ


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