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青春時代
陽子との舞台の日がやってきた。
俺の最初で最後の舞台の日だ。
バンドで出るステージとはまた違う
緊張感だ。
チルチルの衣装を着せられ、何だか
俳優になった気分だった。
不思議と衣装を着せられるとその役
になりきれる。
演劇の俳優ってこんな気持ちなのかと
少しだけ分ったような気がした。
舞台が始まる。
俺の出番がやってきた。
真っ暗な会場の中、ステージだけが
ほのかに浮かび上がっている。
緊張したが、自分でも上手く演じる
事が出来たと思う。
それは舞台が終わって顧問の先生に
入部を誘われた事で実感出来た。
粛々と舞台は進行していった。
俺はミチル役の陽子と台本通りに
チルチル役を演じきった。
楽しかったか?
そう聞かれると返事はNOだ。
楽しかったのならもっと記憶に残って
いるはずだが、俺は最初の登場シーン
ぐらいしか覚えていない。
その後の記憶が全く無いのだ。
ただ、この演劇の勧誘で陽子と出会えた
事は何よりの収穫であった。
演劇が終わってからは俺はもう演劇部に
顔を出さなくなったが、陽子とは完全に
付き合い出した。
陽子は可愛い女だった。
それは容姿だけ無く性格もであった。
彼女は1学年下だったので違う階にいた。
俺の学校は面白い事に学年が上がると
上の階に上がっていった。
校内序列のようなフロアー構成だ。
なので2年生の俺は2階。1年生の
陽子は1階だった。
彼女は授業が終わると何時も俺の教室
まで直ぐにやって来た。
勿論、俺に会う為だ。
俺が軽音楽の練習をしている間もずっと
俺の練習を見ていてくれた。
練習が終わると一緒に帰り、朝になると
また駅前で待ち合わせて一緒に登校した。
俺の学生生活は陽子一色に染まっていた。
1度俺に因縁をつけてきた上級生に
偶然駅前で出くわした。
回りに取り巻きがいたので仕返し
されるかと緊張したが
しかし彼は何も言わずに通り過ぎた。
彼女は毎日手紙を書いてくれた。
その為その手紙は膨大な数であった。
中学の時から女の手紙というものに
出会ったが、女は本当に手紙が好き
だった。
彼女は将来俺と結婚も夢たのだろう。
なんとなくそんな気がした。
女子高生とはそんな事に憧れる年だ。
それに実際、高校を卒業すれば結婚
する子もいる。
女性の精神と身体の結婚に対する
準備は遥かに男より早い。
ある日貰った手紙に俺と陽子と
その間に子供と手を繋いだイラスト
が描かれていた。
そしてパパ・ママ・ラブ(子供の名)
名前をつけ、その翌日から手紙では
俺の事をパパと呼ぶようになっていた。
高校生の俺がパパ?
全くピンとこなかったが
考えてみれば、女は16歳にもなると
子供を産んでママになる子もいる。
やはり、女の方が成長が早い。
この頃を思い出してそう思う。
しかし、反して俺の浮気性はこの頃
から始まった気がする。
こんなにも幸せな高校生活を送れて
いたにも関わらず、何か物足りなさを
感じ始めていた。
それは何かと考えると
陽子に飽きてきていたのだった。
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