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覚醒タイランド

ゴーゴーバーという華やかな舞台で
踊りながらも暗い目をして遠くを
見つめる彼女。

スタイルの良いボディ、そしてはっきり
とした目鼻立ちの中に、そのどことなく
暗い影が神秘的な魅力を感じさせた。

一度気になりだしたら、彼女を席に
呼んでみたくなった。

俺はサーブを呼び、〇〇番が気に
なるので呼んで欲しいと、その時の
シェーンの番号を彼女に告げた。

サーブは直ぐにステージそばに行き
彼女に何か告げていた。

俺がゴーゴーバーで初めてレディを
呼んだ瞬間だ。

彼女はサーブから告げられ少し驚いた
ような顔して、俺の方を見た。

後から聞くとシェーンはまだこの仕事
を始めてから10日程だと言っていた。

そしてタイ語しか話せない彼女は
全くPBされた事が無かった。

席に呼ばれても寡黙な彼女は会話も
続かず、直ぐにステージに戻されて
いたようだ。

しかし、俺はそんな寡黙な女が好きだ。
それはポーと付き合い分かった。

ポーともほとんど会話が無かったが
俺は何も気疲れしなかった。

それどころか、俺は一生懸命簡単な
日本語を教えてあげていた。

俺はそんな事が好きだった。相手に
日本語を教えたりする事が。

それが例え半時間かけて覚える事が
出来るのがたった1言でもだ。

その1言が使えるようになると
その
事に喜びを感じた。

なので、言葉が出来ないポーや
シェーンは逆に俺のタイプだった。

彼女達に言葉を教える事がある意味
俺と彼女達とのコミニュケーション
ツールにもなったし、互いに充実
した時間を持てた。

この20年後、俺は外国から日本に
働きに来る外国人達の日本語教師になる。

まさに、自分にうってつけの仕事に
つけるとは、まさかこの時は夢にも
思わなかった。

俺はまだタイ語なんて話せなかった。
シェーンもタイ語以外話せなかった。

なので、自分の席に呼んだのはいいが
最初の自己紹介の後2人は全く会話が
続かなかった。

しかし、俺は彼女の持っている影に
魅力を感じていた。

しばらくしてサーブがPBをすすめて
きた。シェーンは全く期待していな
かったのだろう、興味無さげな顔を
していた。

しかし俺はサーブに即答で「PB」
そう言った。

するとそれを聞いたシェーンが
突然飛び上がるように喜んだのだ。

俺はびっくりした。

ただ、その理由はその後ホテルで
教えてくれた。

俺が彼女の記念すべきPB第1号だった
からだ。

働きだし、全くドリンクも無くPBも
無い自分に焦りを感じていたようだ。

自分はこの仕事に向いていないと
そう落ち込んでいたらしい。

そして田舎に置いてきた子供や家族
の事ばかりを考えていたそうだ。

どおりでステージで遠くを見つめて
いた筈だった・・・。


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