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青春時代

俺は既に3年生になっていた。
軽音楽部でも先輩達が誰もいなく
なり、俺達3年生が部を運営していた。

年に何回か行うコンサートも盛況で
それなりに俺のバンドも人気があった。

俺が2年生になった時に1年生が
入部してきた。

俺はその時初めて後輩というものを
意識し始めたし、陽子という1学年下
の後輩が可愛くて仕方無かった。

ただ3年生になり、またも1年生の
新入部員が入部してくると、今度は
違った感情を彼女・彼らに持った。

高校時代の2学年差は凄く大きい。

片やもう大人へかなり近づいた年代
と、片や中学を卒業したばかりの
年代だからだ。

軽音部にも7名程の新入部員が入部
してきた。

この時、俺は新入部員と物凄く年の差
を感じた。変な表現だが子供に感じた。

今では40歳近く離れているレディ
でも平気で付き合えるが、この頃は
2歳年下の女の子なんてどう扱えば
いいのか分からなかった。

振り返ると面白い。
多分俺は年齢を重ね、年の差なんて
麻痺したのかも。

それか今では、自分が遠い昔に
失ってしまった若さというものを
相手に求めているのかも知れない。

高校時代はこの僅か2学年差でさえ
遠く感じ、会話する事も無かったし
1年生は3年生を雲の上的存在に
見ていたようで近づいてこなかった。

俺達の部はかなり自由で、バンドごと
で練習が出来、その為他のバンドの
メンバーと話す機会があまり無かった。

まぁ、皆で話すのは部活が始まる時の
挨拶か、またはコンサート前の打ち
合わせの時ぐらいであったと思う。

なので、1年生が入部してきて何か月か
経っていたが、ほとんど話すらした事が
無かった。

その日、部活が終わり終礼をしてから
皆で下校する為ロッカーに向かった。

俺はその時ふと何か予感した。それは
まさかステッカーの犯人が自分の
軽音楽部の子じゃないだろうな?

そう思い例のロッカーの列を見に
行った。

俺はその瞬間立ちすくんだ。何故
なら俺のステッカーが貼られた同じ
ステッカーが貼られたロッカーの
扉が開かれていたからだ。

俺はそのロッカーの持ち主を見た。
それは1年生の優であった。

名前ぐらいは知っていたが、話すら
ほとんどした事が無い。そんな優が
ステッカーの犯人だった。

彼女が俺に気づきハッとした顔になる。

俺も驚いたまま声が出なかった。すると
タイミング悪く同じクラブの仲間がきた。

皆も俺のロッカー事件を知っていたので
彼女のロッカーのステッカーを見るなり

「おお!優。お前か!」

「お前、Mが好きだったのか!」

そう茶化してしまった。

その時、彼女がロッカーの前で突然
泣き出してしまったのだ。

ロッカーの前で塞ぎ込み号泣し始めた。
何か女心を傷付けてしまったのだろう。

若い女は繊細でちょっとした事でも
傷つきやすい。

部員達は気まずくなったのか、その場を
立ち去ってしまった。

俺はどうすべきか迷った。その時優の
友達が気づいてやってきた。

彼女はその場の雰囲気を察したのだろう。
俺に向かってこう言った。

「M先輩、優は先輩の事が好きです。」

「なので、ステッカー剥がさないであげて
 下さい。」

俺はこの言葉に胸が詰まった。

優がどれだけ勇気を出し、俺のロッカー
にステッカーを貼ったのか。

俺には陽子という彼女がいる事は
部員全員が知っている。

それを知った上で貼ってきたのだ。

俺は一言「うん、ありがとう。」
そう言ってその場から離れた。

いや、それぐらいしか言えなかった。

俺は何か胸の中にもやもやとした物を
抱えたまま、陽子の待つエントランスに
向かった。

人を好きになる事は難しいが、逆に
好きになられる事もまた難しい。

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