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青春時代

結衣に呼び止められ小さな手提げ
袋を手渡された。

「M君。これ。」

結衣に手渡された袋が何を意味
するのか俺には直ぐに分かった。

まさか同じクラスの結衣からチョコ
を貰えるなんて思ってもみなかった。

俺には陽子という彼女がいるのを
クラスメート は知っていたからだ。

「陽子さんと付き合ってるんだね。」

結衣は少し残念そうに言った。

「うん。そうだよ。」

「知ってる。でもそれが私の気持ち。」

結衣がその時、俺に手渡した紙袋に
目をやった。

結衣もまた寡黙な女だった。

俺は何故か学生時代から好かれたのは
こんな寡黙な女達からだった。

もしかすると俺が賑やかで目立ち
たがり屋だったせいかもしれない。

自分に無い物を俺に求めたのかも。

そして俺はそんな寡黙な女を嫌い
では無かった。

その後タイに行き始めてからも
長く続いた女達は寡黙な女達だった。

結衣がこの時言った

「M君、それが私の気持ち。」

彼女の言葉が胸に突き刺さり
俺は言葉を失った。

俺は言葉に困り、ただ「ありがとう。」
それだけ言うのがやっとだった。

「じゃ。」

そう言って結衣は教室に戻って行った。

俺は自分がトイレに行く事も忘れ
その場で彼女の後ろ姿を追っていた。

結衣か・・・。
何時からだろう。

もうこの歳になると誰にも相手に
されないので、自分から女を追い
かけるしかないが

学生時代は女からの告白に胸が熱く
なった事があった。

女は思いを胸に秘め、ある日突然
それを一気に吐き出す。

なので、こちら側はその熱い思いに
圧倒されたりするのだ。

結衣も俺に彼女がいるのを分って
いて告白してくれた。

どんな思いだったのだろ・・・。

ただ、女は自分の想いをどうしても
伝えたいと思う事もあるのだろう。

そのきっかけを作ってくれたのが
バレンタインデーであった。

俺は紙袋の中を見た。

綺麗な包装紙に包まれたチョコと
小さなメッセージカードが入っていた。

俺はそのメッセージカードを手に取り
開けてみた。

そこにはこんな事が書いてあった。

「陽子さんといつまでお幸せに。」

俺はそのメッセージカードに釘付けに
なった。

俺と陽子の幸せを祈りながら、自分の
想いを俺に告白してくれた結衣の
気持ちは、如何ばかりかと・・・。

苦しくて辛くて、胸が締め付けられる
想いであったろう。

それを抑え込める女という存在は
やはり偉大である。


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