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青春時代

俺はトモヒサからある有名
洋菓子店を紹介してもらえた。

12月の声を聞くとデパートでは
お歳暮シーズンを迎えフロアー
全体が活況となる。

今でもデパ地下というのは夕方
混雑しているのだろうが、俺が
バイトしていた40年以上も前は
混雑どころの話ではなかった。

とにかく通路で人がすれ違う事が
出来無い。それ程の混雑ぶりで
12月にもなると連日、すし詰め
状態だった。

例えばガラスケースの前で注文しようと
している、か弱い老人などは
人ごみに押し流され注文出来ない
くらいの凄さだった。

要は人の津波に飲み込まれていくのだ。

俺は働きだす少し前に店長に挨拶に
行った。店長はとても優し気な人
だった。

俺の事はトモヒサから聞いていると
即採用してもらえた。

デパートの従業員入り口を教えて
もらい、入店の仕方を教えてもらった。

バイト初日俺は緊張した。

お店に向かい倉庫兼更衣室で着替えた。
しかし、ネクタイがどうもうまく結べない。
学生の俺はネクタイなど慣れていない。

館内放送が流れ全体朝礼が始まるので
集合せよとの指示がきた。

俺はネクタイの結び方を前日父親に
教わったのだが、うまく出来ない。
なので焦った。

まずは朝礼の場まで行き、そこでネクタイ
と格闘していると、いきなり女子社員が
俺の前に現れ、無言で俺のネクタイを締め
はじめた。

びっくりした。
当然見ず知らずの女性だ。

女は30代前半ぐらいで、物凄く色気の
ある女性であった。

俺の目と鼻の先でネクタイを結んで
くれる女性からはとても良い香りがした。

俺はいきなりのその女性の行動に
フリーズしたままだった。

ネクタイを締め終えた女性は俺のネクタイ
をポンポンと叩き。「これでよし。」
そう言って俺に笑顔を向けた。

「あ・あ・ありがとうございます。」

俺が礼を言うと彼女はすっと自分の
店の列に戻って行った。

しかし、俺がネクタイと格闘していた
のを何処で見ていたのだろう。

やはり若い男は直ぐに目立つのだろう。
朝礼はほとんど若い女性ばかりだった。

俺はいきなりの洗礼にデパ地下の
只ならぬこの先に期待した。

俺の採用された洋菓子売り場は人気店で
良い場所に有り、4ケースもある大きな
ブースだった。

デパ地下の売り場というのは基本場所
貸しだ。メーカーに場所を貸し、その
売上から家賃と称して歩率による金額を
天引く。

売上は全て一旦デパート側に収められ
そこから色々と控除され、メーカーに
30~45日後に戻ってくる。

しかしこの家賃が高い。30~40%
引かれるのは当たり前で、その他に
訳の分からない協賛金という名目で
無理やり天引されたりもする。

この頃は郊外にモールなど無い時代。
なので、デパートの天下だった。

デパートのフロアーはプロパー売り場と
委託売り場に別れ、プロパー売場とは
言わずと知れたデパート直営店である。

ただ、直営はほとんど無かった。
直営店は儲からないからだ。(笑)

直営店は当然入り口近くの良い
場所に在り、固定されている。

反して委託メーカーの売り場は
常に構成替えが有り、売り上げが
悪いと直ぐに場所を移動させられたり
ブースを減らされたりする。

問答無用だった。

なので、委託メーカーは必死だ。場所に
より大きく売り上げが変わるからだ。

デパ地下に行き一番目の付く場所で
大きなブースを確保している店は
間違いなく売り上げがNO1である。

俺の採用された店は、人気洋菓子店で
滅茶苦茶忙しかった。息つく暇も無く
お菓子が乱れ飛ぶが如く売れていた。

ただ、場所が悪いブースは暇で、売り場
格差が明暗くっきりであった。

俺が売り場でまずやらされた事
それは包装であった。

如何に綺麗に早く包めるか。
これが混雑時の勝負であった。

お菓子は基本、箱の詰め合わせが
一番包みやすい。しかし、中には
小さなタイプや袋詰めなどもある。

俺は入店したその日から包装の特訓
をさせられた。

包装には基本の形があり、全包装と
片包みと呼ばれるやり方がある。

同じ売り場には店長以外に3人の
女子社員がいた。一人の女子社員が
熱心に、いや、厳しく俺を指導した。

早く包めなければ、戦力にならない
からだ。何度もやり直しをさせられ
ぼろくそに言われた。

はっきり言ってムカついた。

3人の中で一番の先輩格であり店長も
一目置くチーフだった。名前を早苗と
言った。

そして俺はこの早苗が本当に嫌いだった。
何かにつけうるさかったからだ。ところが
驚く事にこの後、彼女と同棲する事になる。

しかし、その前に数々の女達が俺に
言い寄ってきた。

俺のデパ地下物語の幕開けだった。


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