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青春時代

デパ地下のバイトで真っ先に
やらされた事。それが包装の
練習だった。

包装するのが遅いと、他の客を
待たせてしまうし、気の短い客は
違う店に行ってしまう。

なので、如何に早く・綺麗に
包めるか何度も・何度も
やり直しさせられた。

当初はこの包装が出来なかった。
なので、俺は時間がある時は
懸命に練習した。

出来無いと悔しかった。俺は
負けず嫌いの性格だからだ。

ただ、俺には一つ特技があった。
それは書道だ。

子供の頃、算盤と習字を習いに
行かされていた。

俺が小学校生の頃はその2つは
学校の必修科目でもあった。
今ではその必修科目はPCに
変わってしまったのだろう。

算盤は2級。書道は初段までもらえ
ていた。こんな事が大人になってから
凄く役に立ってくれるとは思いも
よらなかった。

なので、学校は算盤と書道は今でも
必修科目にすべきだと思っている。

俺は暗算が早い。それはこの算盤を
習っていたお蔭だ。算盤には2級とも
なると暗算がある。そのお陰で、ある
程度の数字は電卓など無くても頭で
計算が出来る。

それと筆で書く字が綺麗だと言われる。

ある日デパ地下売場で客から
熨斗紙(のしがみ)を頼まれた。

売り場では箱詰め商品を購入される
際には必ず

「熨斗紙は如何がなされますか?」

そう聞くよう指導された。

要らないと言う客もいるが、歳暮時期
などは熨斗紙を付け、更に名前を書く
よう言われる。

初めてこれを言われた時に女子社員が
心配してくれ
「M君書いてあげようか?」
そう聞いてくれた。

しかし俺は「いえ、大丈夫です。」
そう言って筆ペンを持ち書いた。

久々の筆に緊張したが、それなりに
書けた。

書いた熨斗は一度客に確認を取る。
「こちらでよろしいでしょうか。」
そう確認すると客は満足そうな顔で
返事してくれた。

会計が終わり客を見送ると、先ほど
の女子社員が「M君凄いね字が上手。」
そう言って褒めてくれた。

社員の中にはこの熨斗紙が苦手な
子もいるようだ。

客から字が汚いから、やり直せと
言われる事もある。

それから俺は難しい字や、うるさい
客の熨斗紙を任されるようになった。

「M君、お願い。」と頼りにされ
習字を習っていた事に感謝した。

実際は親に無理やり行かされていた
のだが、親はやはり俺の将来の為に
考えてくれていたのだと思う。

俺の配属されたブースは一番メイン
入り口に面していてショーケース
がコの字型に4台あった。

デパ地下では大きな売り場だ。
そして柱を背にしていたので裏にも
違う小さな売り場が3軒あった。

デパ地下でのショップの力は場所と
ショーケースの数で直ぐに分かる。

その柱まきを中心としたブースには
10人以上もの社員がいた。

その中で男は俺と、俺の上司の店長
だけであった。後は全員若い女性だった。

働き始めると裏の女子社員達が
俺に声を掛け始めてきた。

俺は「はっは~ん。これがトモヒサが
言ってた誘惑だな。」

直ぐに分かった。

この頃のデパ地下には可愛い・綺麗
な女子社員が何故か多かった。

多分デパートで働くという事が
この時代の女性達の憧れの仕事で
あったからだと思う。

デパート勤務は当時花形の仕事であり
特にエレベーターガールなどは憧れの
仕事の一つだった。

その後俺の紹介でバイトする友達が
このエレベーターガールに手を出し
とんでもない事になる。

その話はまた後日に・・・。

俺の働くブースはまさに女達のエロス
が渦巻いていた。

デパ地下の菓子売り場は和菓子と洋菓子
で構成されている。当時はそのほとんどが
若い女子社員であった。

そしてある日俺のブースにいる女子社員
からこんなお誘いが来た。

「M君、M君の歓迎会をみんなで
 してあげる。行こうよ。」と。

そしてこの歓迎会を機に、俺は友人の
忠告を忘れ、デパ地下竜宮城へ引きずり
込まれていく。

大学生の俺に、誘いかけてくる若い
OL達。本当に楽しかった。


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