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青春編

マティーニーを飲んだ秀美は
確実にほろ酔い加減だった。

そこへとどめのスクリュー
ドライバーを仕掛ける。

ウォッカを強めにとオーダーした
のだが秀美にはこれが分からない
筈だった。

ウオッカは無味なので多く入れて
も味が苦くなったりしない。

更にオレンジが絞られているので
飲んだだけでアルコール度数が
強いか弱いかなど分かりにくい。

喉を潤す為のドリンクが更に酔い
を誘う作戦だった。

秀美は「これやっぱり美味しい。」
そう言ってスクリュードライバーを
グッと飲んでいた。

これで確実に彼女は酔いが回る筈だ。

俺もウィスキーを5杯程飲んでほろ
酔い加減で気持ちが良かった。

さて、どうしよう。

俺の中でホテルに誘う誘わないの
葛藤が始まる。

仮に誘う事に失敗すれば確実に
次回からは警戒される。

ここが難しい。

すんなり帰してあげれば信頼度は
高くなるが、もしかしたらこんな
チャンスはもう無いかも知れない。

時間を見ると11時半。

終電に間に合わせるなら今帰して
やらなければいけない。

さぁ、どうする・・・。

秀美を見るとカウンターの壁を
楽しそうに見ている。

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ウィスキーや酒の瓶は本当に美しい。
あの形は女性のボディラインにも
感じる。

そして瓶に施されている華やかな
ラベルはまるで女性の
メイクの
ようだ。


派手な物もあれば、シックなのも
ある。

ラベルは見ているだけで目を楽し
ませて
くれる。

秀美はもう直ぐ終電が無くなる筈。
しかし、何も言わない。

こんな時に
「終電無くなるよどうする?」
そんな事を聞くと女は我に返り
現実に戻る。

俺の誘いを待っているのか?
そんな事を考え出すと緊張で更に
酒を飲みたくなる。

女は理由づけを欲しがる。
例えば終電が無くなったのでワン
ナイトになってしまったとか。


彼女は今ほろ酔いで自分の世界を
彷徨っていた。

なので、俺は黙って流れに任せる
事にした。特に何か誘う事もしな
いで。


間を持たせる為にカクテルにまつわる
かじった蘊蓄
を聞かせてやる。

ロシアでは極端に寒い地域がある。
バナナも凍るような地域で、体を
温める役割としてウオッカが飲まれ
ていたとか。

更には戦争で兵士達のモチベー
ションを
上げる為に飲んでいたり
極寒の中ウオッカで体を温め
凍死
しないようにしていたとか。


そんなお酒にまつわる歴史などを
秀美に話してやると、凄く興味
ありげに聞いていた。

やはり学生だったのでそのような
歴史に興味があったのだろう。

ふと時計を見ると既に深夜12時を
回っていた。もう直ぐ全ての終電が
無くなる。俺も秀美も。

今夜は7割程度仲良くなれればいい。
そう思っていたが、俺は腹を決めた。

「今夜ホテルに誘おう。」と・・・。

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