livedoor Blog 恋愛 3位/45890

青春編167
「ボタンの掛け違い」


和美の初めてを与えられた俺は
その時の彼女の涙に打たれた。

そして自分の軽薄さに気づか
され目が覚めた。

それ以降、彼女を体目的では無く
好きという言葉の恋愛の相手に
変わっていくのだった。

しかし、俺は苦学生だ。

彼女と付き合う中でどうしても
自分の金の無さに嫌気が差す
場面がいくつもあった。

それをまず感じたのが服装だった。

彼女は何時も高級感のある服を着て
いた。その頃で言うところの百貨店
で購入していた。

今でこそ赤字の百貨店が多くなり
この形態の商業施設は年々衰退して
いるが

当時は花形の小売業であり、婦人服
売り場と呼ばれるフロアーは女性達
の憧れの場所だった。

百貨店自体も婦人服売り場は稼ぎ頭
だったので、花形の配属先だった。

ただ、金の無い俺は当時洋服なんて
のはスーパーで買っていた。
出来るだけ安い物を探して・・・。

今のようにモールも無く、ユニクロの
ような分かりやすいファッションを
提案してくれるような店も無かった。

そもそも俺はファッションになど
興味が無かった。

反して彼女はお嬢様学校で鍛えられ
ていて抜群のセンスをしていた。

ああいう学校は回りがお洒落なので
自ずと自分も磨かれていく。

俺が1番驚かされたのが冬のデート
の時の事だ。待ち合わせに和美が
コートを着て来た。

そのコートを見て俺は驚いた。

何故ならそのコートは当時人気・・・
いや、女性の憧れのミンクのコート
だったからだ。

当時の金額で100万以上はしたと
思う。物凄いオーラを出しながら
和美が歩いてきた。

そんなコートを着れる女性など
限られた存在だ。

今どきそんなコートを着ている女性
などまずいないだろうが
昭和50年代、毛皮のコートや
マフラーは女性達の憧れだった。

それを学生の彼女が着て来た。

その時の俺と言えば、父親からの
お下がりの古ボケたデザインの
色褪せたコートを着ていた。

見る人が見たら俺達カップルは
お嬢様と使用人のような組み合わせ
に見えただろう。

ただ、俺がこうして自分自身を卑下
しているだけで、和美自身は何とも
思っていなかったようだ。

それはそうだろう。自分は豪華な
物に包まれていて、決して俺の気持ち
など分かる筈は無かっただろうから。

分かっていたらそんな物は着て来な
かった筈だった。そんなボタンの
掛け違いが段々と2人の間を割いて
いくのだった。


クリックして応援してね!
にほんブログ村 大人の生活ブログ タイナイトライフ情報(ノンアダルト)へ
にほんブログ村